謎の金星基地

宇宙英雄ローダン・シリーズ〈4〉『謎の金星基地』

  • 宇宙からの侵略
  • 謎の金星基地

謎の金星基地 (ハヤカワ文庫 SF 61 宇宙英雄ローダン・シリーズ 4)

謎の金星基地 (ハヤカワ文庫 SF 61 宇宙英雄ローダン・シリーズ 4)

あらすじ

  • 宇宙からの侵略

 アルコン帝国すら苦しめるという精神寄生体IVsの侵略を受ける地球。要人たちすら標的にされ、防衛情報が盗まれそうになる。地球の危機にローダン率いる第三勢力は、旧来勢力に協力を要請する。第三勢力の財務相ことホーマー・G・アダムス率いるGCC指揮のもと、侵略に耐えうる宇宙船を建造するのだ!
 また、精神寄生体に対抗するため、ミュータント部隊を本格的に稼働させる。IVsたちの精神移動を、ミュータントたちが補足できることがわかったのだ。IVsの邪悪な計画を逆手に取った作戦は見事成功し、根城を叩くことに成功するが、作戦中にテレテンポラリアのエルンスト・エラートの肉体から精神が引き離されてしまう。時間を移動できる能力を持ったエラートの精神は岐路を見失い、数百万年をめぐる放浪に出る。

  • 謎の金星基地

 幾度の危機を経ても未だくすぶる勢力間の緊張への保険や、ミュータントたちの訓練地を求め、ローダン一行はアルコン搭載艇で金星へ向かう。厚い雲に覆われた太陽系第二惑星は、恐竜の跋扈するジャングル惑星だった!
 そこで一行は、強力な収束重力場を感知する。彼らは、金星に降り立った最初の知性体ではなかったのだ。未知の存在を刺激しないよう、搭載艇をジャングルに隠すと一行は謎の基地を徒歩で目指す。アンネ・スローンが巨大ミミズに襲われたり、オットセイ型の原住民を助けて神と崇められながら到達した基地は、一万年前に太陽系を衰えたアルコン帝国植民団の末裔が作ったものだった。彼らには何らかの大災害と不幸が続き、本国に知られることもなくひっそりと滅びたのだった。

感想

 通算数千人を超える登場人物の中でも屈指の数奇な運命をたどるエルンスト・エラートの遍歴が始まった。ほとんど何もせずに眠りについた彼だけど、ローダンの感慨もあってかインパクトはすごく強くって、かつては一切登場するのかとずっと気にかけていったもの。
 後半は、みんな大好きジャングル惑星の話。サイクルが変わって新しいところへ行くたびに登場し、「またジャングル惑星か」と読者が苦笑いをする、ある意味ローダン・シリーズを代表するジャンルである。誘拐されてみたり、ローダンに助けだされてみたり、アンネ・スローンがなんだかヒロインみたいに見えてくる。
 そういえば、前巻で男性に送られて家に帰ってきたところを第三勢力に誘拐されたイシ・マツさんは、同じ日本人ミュータントのタマ・ヨキダとよろしくやっているよう。ちょっと、前回の男性が可哀想すぎやしませんか?

ミュータント部隊

宇宙英雄ローダン・シリーズ〈3〉『ミュータント部隊』

  • 非常警報
  • ミュータント部隊

ミュータント部隊 (ハヤカワ文庫 SF 45 宇宙英雄ローダン・シリーズ 3)

ミュータント部隊 (ハヤカワ文庫 SF 45 宇宙英雄ローダン・シリーズ 3)

あらすじ

  • 非常警報

 無敵に思えた第三勢力も、意外と困窮していた。アルコン母船を失った今、新造する十分な機材もそれを調達する原資も持たないのだ。月面の母船跡から何か回収できないかと搭載艇を駆ったローダンたちは、母船の残骸が救難信号を発していることを発見した。このままでは、近傍のアルコン帝国前哨基地から派遣されるロボット艦隊の報復攻撃で、地球は火の海にされてしまう!
 危機を前に、第三勢力と地球勢力はついに手を結ぶが、姿を表したのはアルコン帝国のロボット艦隊ではなく、帝国に敵対する弱小種族ファンタン星人の宇宙船一隻。搭載艇の奇襲で撃沈し、地球は危機を脱する。あと、ついでにローダンがトーラに愛の告白をする。

  • ミュータント部隊

 地球の危機はまだ脱していなかった! ファンタン星人の宇宙船もまた、撃沈される直前に救難信号を発していたのだ。さらなる敵対勢力がまた地球に襲い来るに違いなかった。また、地球の旧来勢力と和解した第三勢力だったが、経済的な困窮は続いていた。そもそも、ゴビ砂漠を占拠している土地すら、アジア連合から70億で買い取る必要があるのだ。
 ローダンの行動に共感し行動を共にするテレパスジョン・マーシャル、テレポーターのタコ・カクタ、二人のミュータント(作中では超能力者くらいの意味で使われる)の助力を得て、第三勢力は人材の確保に奔走する。宇宙からの侵略に耐えるだけではなく、将来的には打って出るためには、波の人間では不十分、ミュータントたちの精鋭部隊が必要なのだ!

感想

 原住民と蔑みつつ、ローダンに惹かれていくトーラのツンデレっぷりが目立ち始める巻。ローダンはローダンで、文明が進んでるだけでトーラ自身は愚か者だと散々罵倒した直後に愛してるとか言い出して、二人の間だけ異次元である。
 はるばる地球までやってきたのに、搭載艇の一撃で沈められてしまうファンタン星人の哀れさなこと。銀河を支配するアルコン大帝国と、周辺種族の力の違いを思い知ったもの。「非常警報」はさんざん騒いだ末に結末があっけないので、第三勢力としてはほとんどただで地球旧来勢力との協力関係を得たことになる。
 「ミュータント部隊」は、文字通りローダンの快進撃を長きにわたって支える重要な存在で、今回登場した人物たちの中にも向こう百巻以上にわたって活躍する中心人物が多数。その中でも、財務相が一番重要になるとは思ってもなかったけどね。
 それにしても、部隊の集め方がひどすぎた。普通に誘拐って書いてあるし、イシ・マツさんなんて男性に家まで送ってもらった直後に誘拐されるなんて、可哀想すぎる。
 ところで、本筋になんの関係もなく一瞬だけでてきたサッカー大会が表紙に登場するのは、依光画伯なりの母国びいきなんですかね。

銀河の神々のたそがれ

宇宙英雄ローダン・シリーズ〈2〉『銀河の神々のたそがれ』

銀河の神々のたそがれ (ハヤカワ文庫 SF 40 宇宙英雄ローダンシリーズ 2)

銀河の神々のたそがれ (ハヤカワ文庫 SF 40 宇宙英雄ローダンシリーズ 2)

  • ドームの危機
  • 神々のたそがれ

あらすじ

 ゴビ砂漠の一角をエネルギーバリアで区切り、白血病用の血清(!?)を射ったクレストの回復を待つローダン一行〈第三勢力〉。圧倒的な力を前に東西陣営は一旦手を組み、絶え間ない攻撃を加える。バリアを支えるアルコン製反応炉も、昼夜続く砲撃に過熱し、騒音と振動にローダンたちの精神も追い詰められていく。
 ぎりぎりのタイミングで、深い睡眠に落ちていたクレストの覚醒が間に合い、求めに応じて搭載艇で駆けつけたトーラによってその場は収まるが、入れ違いで東西陣営が月面に差し向けた核攻撃によって母船は破壊されてしまう。
 500光年を航行できるという搭載艦で、ゴビ砂漠の版図を確実にした一行だが、母船をなくしたトーラとクレストはこのままではアルコン帝国に帰ることはできない。地球の若い工業力とアルコン文明の知識で、母船を再建する必要があるが、未だ東西連合にバリアは包囲されたまま。
 しかし、東西緊張を一時的とはいえ一息に解決したローダンに賛同する人は少なからずいた。テレパスジョン・マーシャル、テレポーターのタコ・カクタ、二人のミュータントを始めとする協力者を得て、第三勢力は最大の危機を脱する。

感想

 ローダン率いるテラナー(地球人のこと)の栄華を支えるミュータントたちがついに登場。ヒロシマ原文ママ)直後に生まれた子供たちの中には、放射線により何らかの変異を受けて、超能力を得たものがいて、ヒロシマから26年がたった1971年、大人になった彼らの能力が次々に開花するという設定。「若さ」以外何も持たないテラナーたちがアルコン帝国やその先に進むためには、彼らの能力が必要になるのだ。
 前巻に登場した重力無効化装置や、催眠装置、今回登場した焦点放射器といったアルコンの超兵器は、実際のところ今後はほとんど登場しないわけで、いかに彼らが手加減してるかっていうかと思うと泣けてくるね。

昨日の修正

 ローダン第一巻第一話のタイトル間違えてました。

正:スターダスト計画
誤:大宇宙を継ぐもの

 ローダン日本版の表題は収録作タイトルから取るものと相場が決まっているし、記念すべき第一巻だしと思っていたけれど、まさか数少ない例外とは。後に長大なシリーズになることを考えたら良いタイトルだけど、最初はこうなるとは思っていなかったんでしょうね。
 確認したら、2巻も微妙に違ってた!

大宇宙を継ぐもの

宇宙英雄ローダン・シリーズ〈1〉

  • スターダスト作戦
  • 〈第三勢力〉

あらすじ

ドイツで2600巻、日本で420巻(本国版2冊を1冊に合本しているので、本国換算840巻)を超え、未だに続いている超長編シリーズ、〈宇宙英雄ローダン〉の記念すべき第一巻。
 舞台は1971年、人類初の月面着陸を成し遂げたのは、アメリカ宇宙軍ペリー・ローダン少佐率いる4人を乗せたスターダスト号だった(原作は1961年刊行。アポロ計画は思ったより早く実現してしまいましたね)。一行はそこで銀河の支配的勢力アルコン帝国の不時着船と遭遇する。
 繁栄のピークを過ぎたアルコン文明は退廃期に入っており、女性船長トーラと学術部長クレストの2名以外の乗員はシミュレーション娯楽に没頭し、船の故障にもクレストの病気にも一切の反応を示さないのだった。圧倒的な技術力と信じがたい無気力を目にしたローダンは、地球を覆う東西緊張に終止符を打つため、仲間にも相談せずに独断でクレストに取引を持ちかける。彼の病気を地球の技術で診る代わりに、アルコン船の恐るべき兵器を持って地球上に第三勢力を打ちたて、東西陣営の強引な融和を目指すのだった。

感想

 数千巻続く物語の第一話なのだけど、びっくりするくらいに冒頭の引きが弱い。数十ページに渡って、月ロケットの発射シークエンスをやってくれるのだから、今さら何をという感じである。が、それは1961年に描かれた1971年、作中年代ですら40年も昔のことなんだから、多少は我慢しないと。もしかして、これ当初は10年も続くとは思ってなかったのかもね。
 話は、とにかくローダンの決断的な行動で動いていくんだけど、そもそもが月着陸プロジェクトに選ばれた4人組というだけで、それ以上の信頼関係もない状況で東西融和なんてだいそれたことをやろうとするわけで、ほとんど相談をしないで動いていくものだから、ほぼすべてが独断。地球に戻る際には、途中でコースを変更した時に初めて他の乗組員が異変に気づくという無茶苦茶さ。本国にあと三ヶ月で生まれる子供と妻を残しているフリッパー大尉の可哀想なこと。スター・ダスト乗員で唯一存在すら覚えてなかったのは、1巻で退場しちゃうからだったのね。
 割りとついていけない感じのローダンだけど、クレストからの信頼は絶大。〈第三勢力〉の最後で、何国人ではなく地球人ということで、クレストがローダンをテラナーと呼ぶのはちょっと感動しましたね。

ローダン通読会始めます

 先日、とある筋から〈宇宙英雄ローダン〉シリーズ1-400巻を譲り受けました。中高時代に伯父に借りて170巻くらいまでは読んでいて、グイン、スター・ウォーズと並んで100冊超シリーズ3巨頭ということで、今までもさんざん持ちネタにしてきていましたが、伯父の所蔵が尽きたのと大学受験を期に遠ざかってから十余年が過ぎてしまいました。
 最近、旧友を起点に広がったtwitter仲間で #時の車輪通読会 というのをやっていて、超長編再読の楽しみに目覚めてしまったのか、某所で募集がかかっていた譲渡依頼に手をあげ、届いたのが先週。
 で、一人で淡々と読むのも寂しいので、twitterで #PR通読会 を垂れ流しつつ、こちらで各巻の感想を上げる一日一ローダンを始めようと思います。いつまで続くか、乞うご期待!