大宇宙を継ぐもの

宇宙英雄ローダン・シリーズ〈1〉

  • スターダスト作戦
  • 〈第三勢力〉

あらすじ

ドイツで2600巻、日本で420巻(本国版2冊を1冊に合本しているので、本国換算840巻)を超え、未だに続いている超長編シリーズ、〈宇宙英雄ローダン〉の記念すべき第一巻。
 舞台は1971年、人類初の月面着陸を成し遂げたのは、アメリカ宇宙軍ペリー・ローダン少佐率いる4人を乗せたスターダスト号だった(原作は1961年刊行。アポロ計画は思ったより早く実現してしまいましたね)。一行はそこで銀河の支配的勢力アルコン帝国の不時着船と遭遇する。
 繁栄のピークを過ぎたアルコン文明は退廃期に入っており、女性船長トーラと学術部長クレストの2名以外の乗員はシミュレーション娯楽に没頭し、船の故障にもクレストの病気にも一切の反応を示さないのだった。圧倒的な技術力と信じがたい無気力を目にしたローダンは、地球を覆う東西緊張に終止符を打つため、仲間にも相談せずに独断でクレストに取引を持ちかける。彼の病気を地球の技術で診る代わりに、アルコン船の恐るべき兵器を持って地球上に第三勢力を打ちたて、東西陣営の強引な融和を目指すのだった。

感想

 数千巻続く物語の第一話なのだけど、びっくりするくらいに冒頭の引きが弱い。数十ページに渡って、月ロケットの発射シークエンスをやってくれるのだから、今さら何をという感じである。が、それは1961年に描かれた1971年、作中年代ですら40年も昔のことなんだから、多少は我慢しないと。もしかして、これ当初は10年も続くとは思ってなかったのかもね。
 話は、とにかくローダンの決断的な行動で動いていくんだけど、そもそもが月着陸プロジェクトに選ばれた4人組というだけで、それ以上の信頼関係もない状況で東西融和なんてだいそれたことをやろうとするわけで、ほとんど相談をしないで動いていくものだから、ほぼすべてが独断。地球に戻る際には、途中でコースを変更した時に初めて他の乗組員が異変に気づくという無茶苦茶さ。本国にあと三ヶ月で生まれる子供と妻を残しているフリッパー大尉の可哀想なこと。スター・ダスト乗員で唯一存在すら覚えてなかったのは、1巻で退場しちゃうからだったのね。
 割りとついていけない感じのローダンだけど、クレストからの信頼は絶大。〈第三勢力〉の最後で、何国人ではなく地球人ということで、クレストがローダンをテラナーと呼ぶのはちょっと感動しましたね。