四畳半神話体系

四畳半神話大系 (角川文庫)

四畳半神話大系 (角川文庫)

 円城塔に通ずるものがある脱力系語りで進む、(おそらく)典型的な京大生の青春譚。大学に入った「私」を待ち受けるは、どれも一癖ありそうな怪しい4つのサークル。そして、どのサークルを選んでももれなく付いてくる悪友、小津。どのサークルを選んだとしても、「私」が変わるわけでもないので大学生活に違いはなく、出遭う人には出遭い、落ち着くところには落ち着く。

 今の自分があるのは、無数の偶然があってこそ、と考えていました。大学であのクラスに振り分けられなかったら、スキー部なんかに入らなかったら、友人Yがアニカラオフに行っていなかったら……、そのどれ一つが欠けても今の自分はいないと思っていました。が、本作の発送は全く逆、何を選んで何が起ころうと、多分僕はいるべきところにいるんじゃないか――そんなことを思い何だか安心しています。きっとこれからも、一見重要に思えるような選択を間違えても僕は行くべきところに行くんでしょうから。


 しかし、合コンで薦められた、という状況を加味するとその意図の解釈に困る。お前は「私」や小津みたいな社会の底辺だ、と暗に否定されているのか、でもでも本作において行き着く先というのは黒髪の乙女との甘い関係なわけだし……。
 単に最近読んで面白かったものを何も考えずに挙げたんだという説に一票。ご当地ものだし。