遺伝子捜査官アレックス 殺意の連鎖

遺伝子捜査官アレックス/殺意の連鎖 (ハワカワ・ミステリ文庫)

遺伝子捜査官アレックス/殺意の連鎖 (ハワカワ・ミステリ文庫)

 遺伝子捜査官といううさんくさい響きと酷いタイトルセンスに、こんなものを読むのは自分しかいないのではないか、と思わず手に取った一冊。原題"Sequence"(配列、とくにこの文脈ではDNAの塩基配列)をよくここまで酷くできたもの。

 中身はごく普通の3Fミステリー(著者、主人公、主な読者が女性=Femaleなミステリー)と言ったところ。すなわち、女性がまだ珍しい職種で男たちと競うように仕事をこなし、一方で色恋にも積極的な女性が活躍する物語。
 主人公の病理学者*1アレックスは米軍病理学研究所でスペイン風邪ウイルスのゲノム解読に挑んでいたが、新所長の方針で連続殺人事件の捜査に巻き込まれてしまう。
 とはいうものの、彼女が学者としてやったのは、現場組が集めてきた検体からゲノムを抽出して、シーケンサーにかけて配列を読むという単純作業であって、わざわざ準教授クラスの科学者を使うほどのことではない。その上、DNA判定を待つまでもなく犯人が判明する事件もあったりと、専門家としてのアレックスの存在価値には大きな疑問符を抱いてしまった。
 いや、共同で使ってる人がいる形跡もない研究室で、三台ものシーケンサー*2を独占している彼女にいい感情を覚えられるわけがないのではあるけれど。

*1:本書で使われる「遺伝子学者」という呼び方には違和感を感じる。遺伝学はあっても遺伝子学なんて普通はいわない。

*2:安いものでも一千万くらいする上に、読む限りではハイエンドなものを使っている