伝統の一戦

 さて、大学三年の通常講義期間ももうすぐ終わりが見え始め、次には期末試験がやってくる。
そんな時期だが、その前に一つ大事を決めなければならない――4年次の卒業論文の指導を受ける
研究室選びが佳境に入ってきたのだ。
 取り纏め役の手元に第一次志望調査が集まり、集計結果が発表された。夏まで大人気のように思われていた研究室が実質的な枠拡張によって定員割れだったり、第一志望は誰もいないのに第二志望で人気殺到の研究室があったりと、なかなか面白い分布を示した。
 が、どうも面白がってばかりいるわけにも行かなさそうである。というのも、自分の志望する研究室の第一志望倍率は定数の二倍。定数一人だから、自分ともう一人が志望していることになる。調査前から二人でかなりの時間話し合ってきたが、二人とも謙遜しつつ決して譲らない平行線が今日まで続いてきた。他に定員超過している研究室は少ないが、どうも我々の動向次第では第二志望すらあぶれる人が出る可能性が出てきたようだ。
 もうこれ以上の話し合いは無益な上に、これ以上先延ばしすると他の超過人員との混線に突入することになるので、農学部に伝わる伝統の儀式をもって決定を下すことにした。儀式は明日昼休み、学生研究室の衆人環視のもとで実施されることになった。ちなみに、二本勝負。

 運が我に味方するように。