魔術師ベルガラス 女魔術師ポルガラ デイヴィッド&リー・エディングス ハヤカワ文庫FT

 『ベルガリアード物語』の魔術師ベルガラスとその娘ポルガラが語る、ベルガリアード前史である。どちらも、『マロリオン物語』の後、平和な世界にてガリオンとその妻セ・ネドラが二人に昔語りをするよう頼むところから始まる。

 長老ベルガラスが〈師〉アルダーについたのは七千年も前の話であり、その後、トラクと神々の戦いを経て、予言の時代に入る。〈光の子〉と〈闇の子〉の戦いに関与することになった彼は、〈光の子〉側の〈予言〉を実現するため、西方世界を一手に引き受け奔走する。
 あまりに長大な歴史語りは、語り手を神にも等しき存在とし、その語りに常人は共感することが出来ない。如何にベルガラスがすぐれた語り手であろうとも、その俯瞰的な視点は気に障り、また〈予言〉の実現を最大の目的として行動する姿は冷酷とも映る。
 『ベルガリアード』の世界を良く理解するにはすぐれたものだが、読み物としての評価はできない。

 一方で、三千年を生きたポルガラは、妹ベルダランと〈鉄拳〉リヴァの家系――〈西方の大君主〉にして〈神をほふる者〉ガリオンにつながる――を課せられただけあって、視点は家庭的である。センダリア発祥の秘密を語るアレンディアでの数世紀は彼女の人柄を良く見せてくれていると共に、最終的にガリオンの人格形成にまで繋げることもできる。
 資料という点では『ベルガラス』に劣るが、エンターテインメントとしての質は『ポルガラ』の方が上だったように思う。

銀狼の花嫁―魔術師ベルガラス〈1〉 (ハヤカワ文庫FT)

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運命の姉妹―女魔術師ポルガラ〈1〉 (ハヤカワ文庫FT)

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