暗き神の鎖(上・中・下)

暗き神の鎖〈前編〉―流血女神伝 (コバルト文庫)

暗き神の鎖〈前編〉―流血女神伝 (コバルト文庫)

暗き神の鎖〈中編〉―流血女神伝 (コバルト文庫)

暗き神の鎖〈中編〉―流血女神伝 (コバルト文庫)

暗き神の鎖〈後編〉―流血女神伝 (コバルト文庫)

暗き神の鎖〈後編〉―流血女神伝 (コバルト文庫)

 番外編2巻と外伝3巻をぶっ続けで出すという謎配分により、6巻振りの本編。とはいえ、『砂の覇王』までは無敵で神性すらおびていたラクリゼを『女神の花嫁』で表情豊かな人にして見せ、そしてここで彼女を凌ぐ力を持った弟を登場させる流れは上手い。もうラクリゼ主人公になっちゃいなよとさえ思えるが、親友が先にバルアンとの子供つくっちゃったり、ザカール勢力が本格的に手を伸ばしてきたりとカリエもいつも以上に大変なことに。

 カリエの危機を前に、弟を相手に絶望的な戦いを強いられるラクリゼはもちろん、将軍位を捨てたエド、バルアンの命を受けたヒカイ、ラクリゼの苦渋の頼みを受けたサルやトルハーン、さらにはイーダルといった主要登場人物が揃って駆けつける展開はまさにクライマックス。続くけど。

 今までが(番外編は除いて)全て登場人物の顔見せと人間関係の構築に費やされていたかのように、本編でカリエを中心に人々の想いが次々と交錯していく。後に『喪の女王』が控えてはいるが、〈流血女神伝〉最大の盛り上がりはここにあると言って構わないだろう。