女神の花嫁

女神の花嫁〈前編〉―流血女神伝 (コバルト文庫)

女神の花嫁〈前編〉―流血女神伝 (コバルト文庫)

 〈流血女神伝〉外伝。本編でカリエを守護する美貌の超人ラクリゼと、カリエをつけねらう美貌の青年サルベーンの出会いと訣別を描く。
 著者が番外編(天気晴朗なれど波高し)と外伝は区別している、と再三主張していた意味がよく分かった。単なる前日譚にとどまらず、むしろ流血女神ザカリアとその選民ザカールが初めて中心に描かれ、本編以上に本編のテーマに迫る物語となっている。

 あまりに多くの運命に引っかき回されてふらふらしているカリエよりも、ザカリアとサルベーンの二軸で思い悩むラクリゼの方が主人公として魅力がある。まあ、カリエの方が遥かにおバカなので、当初予定していたタブル・ヒロインからカリエ一本に絞ったという著者の判断は、それはそれで英断だとは思うけれど。