氷結の魂(上下)

氷結の魂〈上〉 (トクマ・ノベルズ)

氷結の魂〈上〉 (トクマ・ノベルズ)

 後書きにもあるように、(ゲームノベル的)ファンタジーに真っ向から喧嘩を売っている作品。
 探索もの、若き英雄と麗しい姫の恋愛劇というフォーマット自体は守っているものの、登場人物の造形が型破りで、文字通り他に類をみない構図を成している。ヒロインは冒頭で暴君化する上に、自分の術で凍り付いてしまい、終盤に魔王の下へ走るまでは主人公勢を罵倒するだけ。若く血気にはやる主人公は筋肉馬鹿で、都合のいい救済もないまま失策を繰り返した末に、失意のうちに下巻は術をかけられて眠るばかり。

 とはいえ、本作の最大の魅力は最後の大団円。炎と氷、二神の対立に翻弄されていた人々が選ぶのは、炎と氷のいずれでもなく、第三の道一神教や二元論からは生まれ得ないセンスに脱帽。