サイロンの光と影

サイロンの光と影―グイン・サーガ〈121〉 (ハヤカワ文庫JA)

サイロンの光と影―グイン・サーガ〈121〉 (ハヤカワ文庫JA)

 グインがケイロニアに帰還すると、不在の間に病に倒れていたアキレウス大帝も見る間に回復し、全てがあるべき姿に戻ったかのように思えたが……。
 グインがいるという只それだけで物語が収束してしまう、というある意味〈グイン・サーガ〉の欠点が前面に出た前半から一転、後半はグインにとってアキレスの腱であるシルヴィアが思った以上に大変なことになっていたということが明らかになる。

 うろたえ、全て投げ出してしまうグインの態度は最悪と言われてもしょうがないが、共感できなくもない。好きという感情と、どう接すれば良いのか、ということは別物だろう。特にグインのように、自分自身に引け目を感じているような場合には、自分よりも他人が動いた方が物事が上手く行くと錯覚することはあってもしょうがない。
 一方で、シルヴィアにもわずかながら同情の余地はあるか。本人が不例と言い張って人目に出ないことを幸いに放置しておきながら、いざ蓋を開けてみたら飛び出た事態に周章狼狽して本人ばかりを糾弾するのは重臣としていかがなものか。


 今回一番驚いたのは、未だに月産千枚近い執筆ペースを誇る自動筆記機械栗本薫温帯ですよ。