青年のための読書クラブ

青年のための読書クラブ

青年のための読書クラブ

 「コバルト文庫なんて読んでたら、脳みそがとけてしまうよ」とは友人の言。いつの時代の頑固親父だ、というコメントは心の中に納めておくことにして、コバルト文庫といえばマリみてマリみてと言えば女学園、女学園といえば最近は桜庭一樹の『青年のための読書クラブ』である。

 東京は山の手の中に広大な敷地を持つ、子女たちの園、聖マリアナ学園。「読書クラブ」には清楚で華やかな一般学生とは一線を画す異形の少女たちが集っていた。学園の成立秘話から最後の日までの実に百年以上を描いた連作短編集。

 『赤朽葉家の伝説』で赤朽葉家を支えた女三代がそれぞれの時代を駆け抜けたのを描いていたのに対し、『読書クラブ』は学園に集う少女たちが過ごした時代百年分。学園の頂点に君臨する生徒会や、一般少女たちの交わす会話などはマリみてを連想させる。
 と言うと一冊で二倍楽しめるんじゃないか、とも思えてくるが、そうはならなかったのが残念なところ。『赤朽葉』ではそれぞれの生涯を描き、まさに少女たちが時代を駆け抜ける様が伝わってきたのだが、『読書クラブ』はそれぞれ事件の起こった一年分のみ。時代と少女、という感性には脱帽するばかりだが、『赤朽葉』に比べると疾走感が足りないと感じてしまう。少女たちにしても、読み手としてはマリみての印象が強いし、実際に描かれるのは桜庭フィルタのかかった強烈な少女たち。いずれにせよ女子校なんてものはファンタジーでしかないのだけど、このギャップは埋めがたい。

 何にせよ、凡百の俗人でしかない自分は、次なる桜庭の感性に期待をしてしまうのだけれど。