火星の長城

 『啓示空間』、『カズムシティ』と桁外れの長編が続いていたレナルズの中短編集。収録作は以下の通り

  • 火星の長城
  • 氷河
  • エウロパのスパイ
  • ウェザー
  • ダイヤモンドの犬

 奇抜な設定の上で巧く物語を走らせるという点ではニュー・スペース・オペラ作家随一であるレナルズの才能がよく発揮されている短編集だった。
 長編では近光速船のエンジンを提供しているくらいしか情報がなかった脳連接派の黎明期を描いた表題作、「氷河」の二作はレギュレーション・スペース世界に深みと広がりを与えてくれる。
 印象的だったのは中編「ダイヤモンドの犬」。未知の知性体によると思われる塔の最上階を目指して、融合疫禍前のカズムシティ中から集められた一行が各部屋に設けられた数学的難問に立ち向かっていくという筋。ゲームのような展開も良いテンポで進み面白かったし、最後まで明かされない建設者や塔の目的が今後どう関わってくるのかが気になるところ。