キリンヤガ

キリンヤガ (ハヤカワ文庫SF)

キリンヤガ (ハヤカワ文庫SF)

 テラフォーミングされた惑星でキクユ族の伝統を守ったユートピアを築こうとする老人の孤軍奮闘を描く連作短編。

・収録作

  • プロローグ もうしぶんのない朝を、ジャッカルとともに
  1. キリンヤガ
  2. 空にふれた少女
  3. ブワナ
  4. マナモウキ
  5. ドライ・リバーの歌
  6. ロートスと槍
  7. ささやかな知識
  8. 古き神々の死すとき
  • エピローグ ノドの地

 より深い知識を得ようと願う少女の悲劇を描いた「空にふれた少女」が傑作、と思ったらマガジン読者賞受賞してますね。表紙も明らかにこの話が題材。
 ヨーロッパの一流大学で博士号まで取っているコリバが極端なまでにヨーロッパ文明を忌避し、ヨーロッパ人が来てから再構成されたまがい物ともいえるキクユ族の伝統をそれと知りながら守ろうとする理由がどこにも描かれていないので、最初から最後まで違和感を持ったまま読み続ける。

 この作品のきっかけとなったオーソン・スコット・カード主催のユートピアというアンソロジーが面白そう。どういうわけか出版されてないというのが残念です。

          • 7/14追記-----

 この作品で一番興味深かったのは、SFでしか実現できない状況下で、原始的伝統の維持というおよそSFとは関係のなさそうな題材を描ききったことです。