マルドゥック・ヴェロシティ3

マルドゥック・ヴェロシティ 3 (ハヤカワ文庫JA)

マルドゥック・ヴェロシティ 3 (ハヤカワ文庫JA)

 09メンバーの過去、マルドゥック市の権力争いの根底が明らかになって行くにつれ、爆心地へ向かってボイルドは速度を増しながら墜ちていく。圧倒的な疾走感と、抗うことのできない市への同化がきわめてよく描けている。ただ、カトル・カールとの対決については3巻では随分と適当に扱われた気がする。ボイルドとの対決を先延ばしにして伝説のカジノ・シーンを描き続けた『マルドゥック・スクランブル』を意識した結果なのかもしれないが、ボイルドの疾走には前作ほどのパワーはなかったのではなかろうか。
 前作と比較するとどうも鮮烈さは足りないが、超人たちのアクション小説として、ボイルドが否応なく虚無へ墜ちていくハード・ボイルド小説として、とても面白かった。