剣嵐の大地1

剣嵐の大地〈1〉 (氷と炎の歌 (3))

剣嵐の大地〈1〉 (氷と炎の歌 (3))

 この作品はハード・カバーで出すというのに、三分冊・三ヶ月連続刊行という読者をバカにしたような出版スタイルをとった。第一部・二部はちょっと高いけど、早く・一度に読めるハード・カバーと、文庫落ちした後、毎月少しずつ読んでいくという文庫で特徴づけていたはずなのだが、これではハード・カバーの意味がない。これだけの本なら、八千円だろうと一度に出す心構えはあるというのに。

 毎回不気味な幕開けから始まる〈氷と炎の歌〉だが、第三部は壁の外で不安にふるえる夜警団のもとへ、異形人の襲来を警告する数千年来吹かれることのなかった角笛の音が響き渡るところから物語が動き始める。二部の終盤、タイミングが良すぎた感があった幾つかの出来事についても、序盤で十分な説明が与えられた。
 三部のテーマは恋愛なのだろうか。諸処で誰もが愛のために愚行をおかす。主要人物で今のところ相手が見つからないのは二部冒頭で幸せな夢から覚めた彼女だけというのは少しかわいそうな気もするが、相変わらず愚かしいところも残っているのでしょうがないのか。
 三部のもう一つの特徴は、壁の外や海の彼方、ウェスタロスの圏外にいる勢力がいよいよ動きを見せ始めたと言うことだ。愛故、若さ故に間違いを繰り返すウェスタロスの人々に、迫りくる脅威。一章一章目を離せない展開が続いている。


 それにしても、岡部宏之の駄訳っぷりはどうしたものか。「これらの野菜をあらえ」って、受験生が英文和訳しているのではないはずなのだが。