ラギッド・ガール

 飛の作品は鮮鋭なイメージを持って読者に浸透してくるものが多い。収録作「クローゼット」はその最たるものだろう。
『グラン・ヴァカンス』*1のジョゼが深層に抱えてる女の原点がここに描かれているわけだけど、今後〈数値海岸〉とどう関わっていくのか楽しみである。

 というわけで、収録作の中では「クローゼット」が一番印象が強かったが、ほかの作品もおもしろかったし、何より〈数値海岸〉誕生の経緯から始まって〈蜘蛛の王〉ランゴーニ誕生で終わる短編集全体の構造が素晴らしかった。
 この作品では未だ〈天使〉やランゴーニの使命については明かされてない(読み落としてなければ)ので、続編(というか当初の二巻)が待ち遠しい。

*1:『廃園の天使』シリーズ第一巻。これを読んでなくても十分におもしろいはずだが、『グラン・ヴァカンス』を読んでいれば、よりいっそう楽しめることだろう。