『まだ見ぬ冬の悲しみも』 山本弘 ハヤカワSFシリーズJコレクション 2006.01
収録作品:
『奥歯のスイッチを入れろ』 書き下ろし
『バイオシップ・ハンター』 SFアドベンチャー 1990.08
『メデューサの呪文』 SFマガジン 2005.05
『まだ見ぬ冬の悲しみも』 SFマガジン 2005.09
『シュレーディンガーのチョコパフェ』 SFマガジン 2005.02
『闇からの衝動』 ログアウト 1995.06
書き下ろしの『奥歯の……』は、超音速で活動できるサイボーグの戦いを山場に持ってきているが、超音速で動く人型を真面目に考察すると何故か滑稽になるというオチ。
『まだ見ぬ…』、『…チョコパフェ』は、行き過ぎた科学が世界を滅ぼしてしまう話だし、『バイオ……』、『メデューサ…』は異知性体の視点から人間社会を批判的に書いている。表題作のアイディアには斬新さを感じたが、特に後者の2作品は説教臭さが先行した嫌いがある。
『闇からの衝動』は、C.L.ムーアやロバート・E・ハワードの著作意欲の原動力にクトゥルー(?)を配置するというトンデモ。本当にこの通りだったら……。
全編に通じる、どこにでもありそうな設定を突き詰めてトンデモに仕上げる手法は素晴らしい。