アッチェレランド

アッチェレランド (海外SFノヴェルズ)

アッチェレランド (海外SFノヴェルズ)

 特異点(シンギュラリティ)は、その名の示すとおり点で起こる離散的な現象なのか、それとも連続的な変化なのか、多くのシンギュラリティものは前者の立場をとり、ある一点で激変した後の世界を描いているが、本作の立場は後者、激変し続ける世界と深く関わる一族三代を描く。
 精神活動の産物が無償で共有される互恵経済が実現するためには、強力な機構が一元的に社会利益を分配する土壌が必要で、つまるところ共産主義そのものなわけだけど、アッチェレランドではマンフレッドと全地球規模で加速し続ける計算能力が緩やかに実現する。

 章ごとにゴシック体で始まる前口上から、行を進めるたびに登場する新ガジェット、新旧様々な思想が入り乱れせめぎ合う人々と、全てが格好いい。黒丸文体によるニューロマンサーが登場したときの衝撃に匹敵するんじゃなかろうか(当時生まれたばかりだったのでわからないけど)。