砂の覇王1−9

砂の覇王〈9〉―流血女神伝 (コバルト文庫)

砂の覇王〈9〉―流血女神伝 (コバルト文庫)

 〈流血女神伝〉二本目は九巻組。
 前作でルティガヤを後にしたカリエたちは、逃避行の途中で騙されて隣国エティカヤに奴隷として売られてしまう。粗暴で有名なエティカヤの王子バルアンの後宮に入れられたカリヤの運命や如何に……。

 奴隷だったり、小姓だったり正妃だったり、某国の遺姫に海賊と、立場の変わること変わること。「一巻一コスプレ」とか後書きで書いてるけれど、それくらい目まぐるしく立ち位置は変わる。でも、それが周囲に流されているだけに見えるのは、カリエ自身にこの先どうしたい、という一貫した目標がないからなんだろう。そう言う意味で、どんなことをしてでもカリエとエディアルドに復讐するという強い意志を持ったサジェの存在はカリエにとっても重要だったはずだったし、個人的にも好きだったのであっさり退場してしまったのは残念。
 女神の意図が明確でないこともあって、とにかく勝手に孕まされることについては断固拒否する、みたいなことを言っていたのにふらふらバルアンの敵に抱かれてみたりと、カリエの流され易さがとにかく気になった。なんというか、〈女神伝〉には柱となれる人物がかけているので、安心して読んでいられないとこがある気がする。

 中央も腐敗していれば、声だけ上げて何もしない民衆も腐っているという死に体のルティガヤに、あれだけ鳴り物入りで入ったドーンたちさえも苦戦するというのは意外。虎視眈々と狙うバルアンに異端の助けで這い戻ってきた第四王子と、内憂外患で今後の展開が期待できそう。
 それにしても、このルティガヤの末期症状は現実にあるどこかの国を彷彿とさせますが……。


 どうでもいいけど、プロット10行が9巻になるって、プロット適当すぎだろ。栗本の御大すら凌駕するんじゃなかろうか。