BH85 青い惑星、緑の生命

 絶対に効果のあるものを作らなければならないという強迫観念に駆られる毛利が開発した発毛剤は、遺伝子組み換えで生み出した毛髪状生物を頭皮に定着させるという発想の転換の産物だった。もちろんそんな危なっかしいものを会社が認めるはずもなく、彼は開発部門を外され、試作品も破棄される予定だったのだが……。
 と、のっけから「発毛剤版ブラッド・ミュージック」。毛利の手を離れた毛髪状生物――ネオネモは異常な速度で増殖し、接触した生物を融合することで存在を共有していく。

 本作が明確に『ブラッド・ミュージック』と異なるのは、ネオネモと絶対に融合しない存在が複数いるところだ。ネオネモにとって、自分と異なる存在はどういう意味を持つのか。取り残された人々は、伴侶を、家族を、知人を取り込んだネオネモに何を思うのか。
 吾妻ひでおのイラストと文体が相まって、ゆるゆるとした雰囲気で描かれる幼年期もの(?)。