〈リフトウォー・サーガ〉第二部

王国を継ぐ者 (ハヤカワ文庫 FT フ 2-19 リフトウォー・サーガ 第 2部1)

王国を継ぐ者 (ハヤカワ文庫 FT フ 2-19 リフトウォー・サーガ 第 2部1)

国王の海賊 〔リフトウォー・サーガ第二部2〕 (ハヤカワ文庫)

国王の海賊 〔リフトウォー・サーガ第二部2〕 (ハヤカワ文庫)

公子の帰還 (ハヤカワ文庫 FT フ 2-21)

公子の帰還 (ハヤカワ文庫 FT フ 2-21)

 旧版では〈リフトウォー・サーガ〉4,5(上・下)とされていた2作3巻を、第二部と改めた新装版。感覚からすると、『王国を継ぐ者』は今のところ本筋にはほとんど絡まない外伝だが、『国王の海賊』、『公子の帰還』(原題は"The King's Buccaneer"=国王の海賊)はリフトウォーの黒幕だった蛇人間たちがまだまだ健在であることを示すつなぎ的作品。
 フィーストの公式サイトによれば、この二作は"Krondors Sons"シリーズであり、文字通りクロンドル公アルサの子供たちの物語なのだけれど、逆に言うとその他の登場人物の扱いに愛がみられない。リアムはほとんど出番がないし、マーティン夫婦は大変なことになるし……。

 王道を突き進む数多の作品の中でも〈リフトウォー・サーガ〉が頭抜けているのは、登場人物の生き生きとした様子と、(恐ろしいくらいの急テンポが可能にする)大河性だろう。第一作"Magician"(新装版『魔術師の帝国』、『異世界の虜囚』、『偉大なる者』)では前半で見習いだったパグとトマスが後半ではいきなり大魔術師と超種族の力を継ぐ者になるし、"The King's Baccaneer"では、ニコラスの個性を形作る一因であった足の奇形が(表面上は)一瞬で矯正されるというように、成長物語としては性急に過ぎるが、その分より多くの登場人物にスポットが当てられ、大勢の人によって物語が形作られる賑やかさが実現されているのだろう。