虎よ、虎よ!

 20世紀版モンテクリスト伯
 漂流中の自分を見捨てた《ヴォーガ》に復讐することだけを考えて、周囲を巻き込んで行動していくガリー・フォイルの力強さが魅力。全体の構成も丁寧で、解説にある「十年に一度の名作」という煽りも納得。ただ、感情が激すると顔に虎のような入れ墨と「N♂MAD」の文字が浮かび上がるという設定がイマイチ活かし切れていなかったのが残念。

 後半で重要になるフォイルの恋だが、一目惚れという現象にふと違和感を感じた。最近は共同作業で困難を乗り越える過程で段々と惹かれていくというような筋立てのものが多い気がする。電撃的な恋なんてファンタジーですよね。