SFセミナー2008レポート

 本会は結構詳細なメモをとってあったので、一昨年の京フェスのように再現を試みたのだけれど、いざ起こした原稿を読み返すと案外再現度が低かったので破棄。ついでに、そっちに時間も気力もとられたので、手抜きで行きます。なんという……適切な四字熟語が思いつかなかった。

本会

 一コマ目「Speculative Japan」では、巽孝之を中心にして如何に日本SFがspeculativeであったか、という論が展開された。普段余り評価軸にspeculativeという要素を考えていない(というか、speculative自体がイマイチわかっていない)せいか、論旨は結論ありきに聞こえてしまった。
 荒巻義雄が何度も強調していた文学理論はどうやら哲学をベースにしたものだったようだけど、こうした人文科学と自然科学の最先端をまとめて取り込んでしまうところがSFというジャンルの魅力なのかもしれない。

 会場からの質問では牧眞司さんの「最近の作家をSpeculative Japanの水準で評価するとどうなのか、面白いのか」という質問に対して、巽孝之川上弘美に対する山野浩一笙野頼子にたいする荒巻義雄の影響関係を挙げて答えていて、読者的視点と学者的視点が一向に噛み合わないのが端から見ていると興味深かった。


 お昼は昨年に続きクアアイナで。広くもない店内のほとんどをSFセミナー客で占拠してしまった。


 二コマ目、「藤崎伸吾インタビュー」。『ハイドゥナン』はアイディアを詰め込むだけ詰め込んだ結果、アイディア同士が噛み合わずに終わった残念な作品だったけれど、それだけにアイディアや作品内で語りきれなかったであろう周辺の話を期待。が、本人にそんな話をする気はさらさらなかったようで、嬉々として「しんかい6,500」に乗ったときの話ばかりを繰り返す。
 まあ、潜水船が如何に騒音と光をまき散らしているかがわかったくらいか。確かに、あれなら大抵の魚は驚いて逃げるわな。


 三コマ目はショートショート企画。さすがショートショート作家というか、パネリストの方々は全員頭の回転が速く、当意即妙な発言が縦横無尽に駆けめぐる企画に。皆さんが、星新一に強い影響を受けつつ、星さんとは違う方向性を持つショートショートを目指しているというのが印象的だった。
 余りショートショートは読んでないのだけれど、アイディアの展覧会へ行くようなつもりで読んでみようかしら。まずは井上雅彦監修の『ひとにぎりの異形』から。


 本会最後は電脳コイルで磯監督インタビュー。
 会場にいる誰が見てもSFなアイディアなのにもかかわらず、「SFじゃないですから」と頑なに主張するのは、監督が子供の頃にガンダムが「これはSFではない」と言われたことに起因するらしい。「あのガンダムでさえSFではないんだから……」というのが制作者側ではよく言われているとか。
 設定厨なこだわりを見せる一方で、自分たちが目指しているのはエンターテインメントであって、リアルさを追求するあまりにそちらが疎かになってはいけないと何度も繰り返し主張されていたのが印象的。

合宿企画

 本郷のクリエで時間をつぶしてから、夕飯をムンバイで。ぎりぎりになって研究室にプロジェクターを借りに行っていたら、オープニング遅刻した……。


 一コマ目はなぜかSpeculative Japan部屋。荒巻さんが理論に裏付けられた文学批評の重要性を繰り返し強調していらっしゃった。まあ、自分がやっているのは感想文に毛が生えた程度のものでしかないですから……。


 一コマ目が押していたので、ライブSFスキャナーを途中から聞く。紹介の仕方の違いなども気をつけて聞いていると参考になるもの。事前準備とよどみなく、分かりやすい説明ではid:catalyさんが頭抜けていました。


 三コマ目はSFファン交流会でSFマンガ企画。予想を遙かに上回る大盛況に感謝です。人が多いと、プロジェクターで場所を取ってしまうのが申し訳なる。四人のゲストに2,3作ずつおすすめマンガを紹介してもらって、予定通りV林田さんにきっちり落としてもらう。しかし、一番のおすすめが誰も紹介してない(配布のリストには載っていた)『サイコスタッフ』(水上悟志)というのは謎。
 とりあえず、すぐに見つかった『ジャバウォッキー』(久正人)と『サイコスタッフ』は読んでみました。


 四コマ目、若者の部屋では割と暴走してしまい、小浜徹也さんと同じ議論を無限ループ。参加者の方々にはご迷惑おかけしました。しかも、口だけでほとんど実行できていないのは最低だ、自分。
 不十分ながら動き出しているAtoZ読書会の他に、DAICON7の方が独自に動いて大学SF研ネットを作ろうとしていることが分かったのは収穫。感謝しつつ活用しましょう。

大学SF研交流用掲示
http://bbs.infoseek.co.jp/Board02?user=level_dark


 企画部屋が終わった後は大広間を中心にふらふらしてお喋り。普段見かけない方に話しかける気力がなかったのは反省点。