影の棲む城

影の棲む城〈上〉 (創元推理文庫)

影の棲む城〈上〉 (創元推理文庫)

影の棲む城〈下〉 (創元推理文庫)

影の棲む城〈下〉 (創元推理文庫)

 このエントリー書くまでに4回くらいウィンドウ閉じてしまった。呪われてる気もするので手短に。

 『チャリオンの影』に続く〈五神教シリーズ〉第二弾。
 本作の主人公は、前作では半ば狂女扱いを受けてほとんど存在感のなかった国太后イスタ。とうに夫には先立たれ、息子と母を失い娘は独り立ちをして彼女の手を離れ、残ったのは故郷での長い隠居生活のみ。厳格だった母の代からの家臣たちの過保護降りと、それが暗示する未来に嫌気が差した彼女は巡礼と称して城を飛び出してしまう。安全なはずの内地でなぜか敵国の襲撃を受けた彼女を救った美丈夫は、かつて彼女が殺してしまった男の息子だった……。
 前作で大して印象の良くなかった40歳未亡人を主人公に据えて、こんな物語を展開させてしまうビジョルドの恐ろしさよ。最初は世を恨んで否定するだけだったイスタが、皮肉な視点を棄てないままに次第に快活さを取り戻していく様は絶妙。前作だとあの家系でどうしてイセーレがあんな跳ねっ返りなのか分からないが、本作終盤のイスタを見れば納得できる。

 あと、五柱神の位置付けもちょっと変わっているね。ファンタジーにおける宗教は、まず神が実体を持つ否かで分けられると思っているのだけど、五柱神は前者。ただし、現実世界に実効的な影響力をふるうことはできずに、触媒となる聖者を必要とする。で、自分の都合に関係なく聖者にされた人は大抵人生を滅茶苦茶にされて、必ずしも神に感謝ばかりを捧げなくはなる、と。SF作品にも似たような設定の話があった気がするけど、なんでしたっけ?