昇竜剣舞5−7

昇竜剣舞〈5〉“光りの要塞”陥落!―「時の車輪」シリーズ第7部 (ハヤカワ文庫FT)

昇竜剣舞〈5〉“光りの要塞”陥落!―「時の車輪」シリーズ第7部 (ハヤカワ文庫FT)

昇竜剣舞〈6〉識女の秘密―「時の車輪」シリーズ第7部 (ハヤカワ文庫FT)

昇竜剣舞〈6〉識女の秘密―「時の車輪」シリーズ第7部 (ハヤカワ文庫FT)

昇竜剣舞〈7〉剣の王冠―「時の車輪」シリーズ第7部 (ハヤカワ文庫FT)

昇竜剣舞〈7〉剣の王冠―「時の車輪」シリーズ第7部 (ハヤカワ文庫FT)

 4年前に昇竜剣舞5まで読んでなげだしていた〈時の車輪〉を再開。

 「絶対力を織り上げる」というヴィジュアル化された魔法様式はとても印象的だし、敵味方問わずどの陣営でも仲間内で腹の探り合いをやっていて、わけがわからないくらいに複雑になった人間関係はほかに及ぶものがないだろうと思う。超長編の利を生かした伏線も張りまくりなので、正直4年間のブランクはきつい。先述のとおり登場人物もやたら多い上に利害関係が交錯しすぎていて、普通に読んでいても覚えきれないほどなのだ。

 超長編の醍醐味ともいえるその辺のすごさを久々に味わいはしたけれど、通算44巻読んだあとに投げ出しただけのことはあって、嫌いな部分も早くも思い出された。主人公アル=ソアがハーレム状態*1なのをおいたとしても、どうしても気持ち悪い部分がある。この作品における魔法である絶対力は、男性源(サイデイン)と女性源(サイダール)と文字通り性別ごとの根源を持ち、そのうち男性源は闇王に汚されたため、安全に使えるのは女性源のみ。男性源にふれた男は遠からず狂気に陥り災いを招くため、女性源にふれられる女性のみで構成された異能者(アエズ・セダーイ)によって徹底的に排斥されている。女性優位な世界観に加え、登場する女性たちは判を押したように気が強いものばかりで、アル=ソアたち男性陣は彼女らに振り回され――と一見すると女性びいきなのだが、後半で出てくる男性源を使う男たちは短時間の訓練で異能者たちを圧倒し、また主要登場人物を愛し始めた(デレた)女性たちは必ずと言っていいほど色ボケし……強烈に男尊女卑的になっていく。
 ル=グィンのフェミニズムなんかはそんなに気にしたことがなかったのだけど、この作品に関しては外見と内実が正反対なことも手伝ってか、どうも引っかかる。

 原作では各部一冊だったものを5−8分冊して刊行しているので、リアルタイムで追いかけているときには一冊一冊の内容が薄くてつらかったが、幸いにして既刊11部までは邦訳が出そろっているので、その点は回避できそう。完結となる12部が本国でも当分刊行されなさそうだから、ある程度時間の余裕もあるし。

*1:第一部で既に3人の女に愛される(そのうち一人は予言者本人)と予言されているほど