ラ・イストリア

ラ・イストリア (ハヤカワ文庫JA)

ラ・イストリア (ハヤカワ文庫JA)

 新種のウイルスで荒廃した世界という設定は構造も古臭ければ、生命科学的にも大分げんなり。その辺に目をつぶれば、丹念に描かれた中米は鮮明なイメージを呼び起こすものになっている。
 とはいえ、グアルディア 上から続くシリーズの肝は、世界観ではなく登場人物の抑制された思慕だろう。今作では狂気のエッセンスも加わり、より磨かれている。

 次巻は舞台をアジアに移すとか。というか、歴史的・地理的にこれだけ丁寧な描写をしておきながら専門が実はシルクロードでした、というのは驚き。