忘却の船に流れは光

 宗教独裁の世界にあって、敬虔な修行僧だった主人公は自由に生きる人たちとのふれあいから閉塞した世界の在り方に疑問を抱き、そして彼の冒険は世界の根源にまで至ることになる――王道ジュブナイルのような筋のSF、ただし田中啓文文体みたいな。
 田中啓文そのままの文体でこれだけ重厚な物語が描けるというのは、ある意味ものすごい気がする。落ちまできちんと田中啓文してるし。