冬の巨人

冬の巨人 (徳間デュアル文庫)

冬の巨人 (徳間デュアル文庫)

 別に古橋強化月間ということではないのだけど、たまたま機会が重なって立て続けに読んでいる。こうしてみると、ケイオス・ヘキサ三部作の疾走感と詰め込みが逆によくわかってきた。今のところ、ケイオス・ヘキサ以外は、極めてよくできているがそれ以上ではない、としか思えない。文章や構成の巧みさは確かに評価の一要素だが、面白いと唸るようなアイディアや勢いに欠けているような気がする。
 まあ、とにかくすごくワイドスクリーン・バロックしているという『斬魔大聖デモンベイン 軍神強襲 (角川スニーカー文庫)』や、最近評判のシスマゲ2を読んでないので、あまり強くは言えないのだが。シスマゲのようなはっちゃけは結構好きだし。


 冬世界を一週間に一歩のペースで歩む巨大な機械人形の上で、都市を造り暮らす終末世界の人類――世界観は魅力的なのだけど、そこで展開される話が広がりそうで広がらないもどかしさ。似たような世界観、人物構成ながらも、外に飛び出していった『移動都市 (創元SF文庫)』に比べるとスケールが見劣りする。徹頭徹尾視点が巨人の"老い"にあったというのなら、それはそれでもっと描きようもあったのではなかろうか。