膚の下

膚(はだえ)の下〈上〉 (ハヤカワ文庫JA)

膚(はだえ)の下〈上〉 (ハヤカワ文庫JA)

膚の下 (下)

膚の下 (下)

 火星三部作完結編。てっきり、第三部では月と地球の戦争をアミシャダイの視点から語るものだと思っていたのだけど、実際には戦争後、火星移住計画の末期を舞台に、『あなたの魂に安らぎあれ (ハヤカワ文庫JA)』で描かれる世界の在り方が創られる経緯が描かれた。
 人間ではない知性体(特に人間によって創られた)と人間のシビアな関わりから人間の在り方を描く、という神林節は健在。自分の信じることをするしかない、という信念が他者の存在を認めて初めて生まれるというのは凄い。

 慧慈理論の辺りは必ずしも賛同出来ない部分が多かったが、何より突っ込むべきは、三部作全てに登場する唯一の人物である梶尾少佐の扱われよう。何やっても失敗ばかりなのに、なんで先遣隊を任せられるんだ。