マルドゥック・スクランブル

 『ヴェロシティ』を読んだ勢いで再読。はじめは流し読みですませるつもりだったが、ブラック・ジャックが始まるとそうも行かずに熱中してしまった。やはり、こちらの方が好きだ。『ヴェロシティ』はボイルドと一緒に奈落へとせかされているような感覚だったが、『スクランブル』はカジノのギャラリーのように、少し離れたところから手に汗握りつつバロットを見守るような感覚か。

 ところで、冲方丁は『スクランブル』で語られる過去と『ヴェロシティ』を一致させようとする努力はあまりしなかったようだ。『スクランブル』で描かれるボイルドは陰のある戦闘狂であって、濫用の経緯も随分とお粗末なものだったのでそこはまだいいとして、オクトーバー社の創始者が三博士の一人で、脳死状態ながらまだ肉体は生きているという矛盾はどうするつもりなのだろう。続編への期待も込めて気になるところ。