ストームブリンガー

ストームブリンガー―永遠の戦士エルリック〈4〉 (ハヤカワ文庫SF)

ストームブリンガー―永遠の戦士エルリック〈4〉 (ハヤカワ文庫SF)

 今、新装版エルリック・サーガを初出順に読んでいる。『この世の彼方の海―永遠の戦士エルリック〈2〉 (ハヤカワ文庫SF)』 収録の「〈夢見る都〉」と「神々の笑うとき」を読んでから本作を一気に。本当は表題作の前にすごく重要そうな「タネローンを救うために」が入るんだが、如何せん旧版は三巻までしかもってないのであきらめ。
 例によって乱暴な演繹ではあるが、エルリックを読むことでやっとコナン・サーガに代表される“強い主人公”に対する“弱い主人公”という概念が判った気がする。以前『時の車輪』(ロバート・ジョーダン)なんかを読んだときには、アル=ソアは全然弱い主人公ではないと思っていたのだが、結局のところ、自分の力に対する葛藤を抱えると言うことが“弱い主人公”を描いた作品に通底する題材なのではないかと感じた。

 話題を作品自体に戻すと、デビュー作でいきなり「〈夢見る都〉」を出したというのは今でも十分な衝撃である。冷静に考えれば、自民族に相容れないからといって勝手に放浪の旅に出ておいて、従兄弟が王位を簒奪したとして復讐で国自体滅ぼしてしまうというエルリックの行動は横暴すぎる気もするが。
 時に、新装版はムアコック自身が編纂したらしいが、作中年代順に並び替えるにあたってどれくらい手を入れたのだろうか。今更ながら、年代順に読んでも十分楽しめたのではなかろうかと思う*1。とくに、ストームブリンガーは過去の集大成みたいなところがあるから、年代順に読んで登場人物についてもっと知っていれば、灌漑も一入になったに違いない。

*1:別に、初出順に読むことを否定しているわけではない。作品には作者のその時点での意図というのがふくまれるわけで、それを感じ取れるというのも重要なことだと思うし