西の善き魔女8

西の善き魔女〈8〉真昼の星迷走 (中公文庫)

西の善き魔女〈8〉真昼の星迷走 (中公文庫)

 ノベルス版外伝3巻にして、シリーズの完結編。そもそも、なぜ当初外伝として刊行されたのかよく分からない。

 結局、物語は最初から最後までフィリエルの頭の中のように複雑さを断ち切った明快な形で進んだのだろう。西の善き魔女の統べる、権謀術数渦巻く国を舞台にして、最後は世界の存続を巡る主導権争いにまで到ったというのに、知恵比べ的な展開はほとんど見られずに終わった。これまでの展開を見ればこれも著者らしい終わらせ方だとは思うが、いくら外伝として刊行したとは言え、最後はせめて大団円的な終わり方にして欲しかった。

 世間知らずの少女が突然権力争いに巻き込まれ、持ち前の実直さで道を切り開いていくうちにより大きな秘密に迫る――極めて典型的なジュヴナイル・ファンタジーであったが、フィリエルの元気の良さはやはり読んでいて爽快だった。