宿命の子ら

宿命の子ら―マロリオン物語〈5〉 (ハヤカワ文庫FT)

宿命の子ら―マロリオン物語〈5〉 (ハヤカワ文庫FT)

 『ベルガリアード物語』に続く『マロリオン物語』の完結巻であった。本国ではこの後に出版された外伝『魔術師ベルガラス』、『女魔術師ポルガラ』が今回の復刊では『ベルガリアード』と『マロリオン』の間に刊行されたため、日本ではシリーズの最後ということになる。

 このシリーズ、登場人物はもちろんのこと、外伝で披露されるように世界中の国についても成立から始まって事細かな設定のもとに描かれているし、人物同士の掛け合いも軽妙で好みに合うものなのだが、全体を見たときにどうしても楽しみきることができなかった。というのも、全編通じて〈予言〉が強い束縛をかけており、主人公たちは次々と課される使命を果たしながら予言をこなしていく、という印象がぬぐえないのだ。ゲーム・ノベル全盛期に描かれた作品とはいえ、ゲーム流のシナリオの影響をあまりに強く受けているのではないだろうか。

 力量は十分な作家なので、今度復刊する『エレニア記』、『タムール記』に期待したいところ。